2012年4月23日月曜日

地元紙で識るオキナワ


沖縄の2大地元紙の1面コラムがなかなかいい
琉球新報は「金口木舌」といい、沖縄タイムスは「大弦小弦」(記名記事)という。
Webサイトでも読めるのですが、この1週間に掲載されたもののうちみなさんにもぜひ読んでほしいと私が勝手に思ったものを紹介します(原文はタイトルも太字もありません)

司馬さんが書いた38年前の沖縄


 酔って若い女性を追い回す学生。本土から来た女性が見とがめ、たしなめた。すると学生は「本土が沖縄に何をしたか、知っているか」「沖縄の苦しみも知らないくせに、何や」―
 
 作家・司馬遼太郎さんの「街道をゆく沖縄・先島への道」に出てくるエピソード。その後、お年寄りが砂浜で拾った紙コップで泡盛を勧める。作家は「あの学生たちが捨てたものではないか」と書く

「沖縄の痛み」を知っている風だが行動が伴わない。司馬さんはこの挿話を淡々と記すだけだが、復帰前後に見られた「本土資本の沖縄の土地買い占めというたけだけしさ」の底にある意識を示唆したように思える。司馬さんが沖縄を旅したのは復帰間もない1974年のこと

 芸能などの沖縄ブームもあって沖縄を理解する人は増えてきた。特に自然保護などの運動では、県外の人が沖縄人以上に力を入れる例も聞く。そう見ると、本土と沖縄という心の距離感はだいぶ縮まったようにも思える

 た� ��基地問題や経済格差など本土と沖縄に横たわる溝はまだまだ深い。いまだに「基地の経済効果は大きい」と勘違いする大臣殿もいるくらいだ

 きょう12日は司馬さんが没して16回目の「菜の花忌」。司馬さんの旅から40年近くたち、沖縄の何が変わり、何が残ったのだろう。「日本における近代国家とは何か」を問い続けた作家に現在の沖縄も見てほしかった。(金口木舌2/12


 (朝日文庫

記憶の風化が進んでいる


 記憶の風化が進んでいる。週刊誌「シュテルン」によると、ドイツの若者の5人に1人が、ユダヤ人などが犠牲になったアウシュビッツ強制収容所で何があったか「知らない」と答えた 

 ドイツの歴史教科書はナチス台頭の背景と戦争被害に多くのページを割く。授業は討論中心で、生徒が自ら考えることを重視する(熊谷徹著「ドイツは過去とどう向き合ってきたか」)。戦後、負の歴史と対決してきたドイツでも記憶の風化にはあらがえないのか
 
 被爆地・広島では8月6日の平和記念式典で、各世代の交流が見られる。遺族の車いすをサポートする学生、参列者に花を手渡す子どもたち。周辺では、学習会が活発に催されている
 
 国内外から人々が「ヒロシマ」を訪れる。原爆投下の記憶と現代の核問題を結ぶ発信力が人々を引き寄せていると感じていたが、昨夏に訪ねた際、発信力を支える地道な学び、継承の大切さを実感した

 戦後67年の沖縄。家族に戦争体験者がいない環境が日常的となりつつある。ドイツの記憶の風化は、ひとごとではない。本紙が昨年末に実施した県民意識調査で94%が沖縄戦の継承を必要と答えていた
 
 日米に翻弄(ほんろう)された沖縄の特異な歴史の教訓をどう次世代につなげるか。ドイツ、広島の試みに学びつつ、沖縄でも各世代に見合った細やかな継承方法の模索が必要ではないか。(金口木舌2/13

 「沖縄県平和祈念資料館」の年間入場者数は、「美ら海水族館」の5分の一、「首里城」の4分の一です

秘密保全法案


感情的な苦痛、物理的な痛み
 
「民」という漢字は、古くは神に仕える者の意味だった。元をたどれば、目を突き刺す形であることを漢字学者の故白川静さんは説いた。目の見えないさまが源にある

 今では意味が変わっているが、国民の目から事実を遮るようなことが発覚した。福島第1原発事故の放射線量マップをめぐり、東京電力が公開のひと月以上も前に、米原子力規制委員会へデータを提供したという

 経産省原子力安全・保安院に報告したのは米側より1日あとだったというから驚くばかりだ。原発については、文科省のSPEEDIと呼ばれる放射能の影響予測データが、事故直後から米軍に渡っていたことも判明している

 自国民に公表する前に外国へ資料を出すという不見識。基地問題に触れるまでもなく� �国民より米国の顔色をうかがう体質が見えて不愉快極まりない。いったいこの国は誰のものだろうか

 迅速な情報公開があれば、住民の対応にも余裕が出ただろうし、専門家の意見を聞く時間もより多く持てたはず。対応策が後手続きだけに、悔やまれる

 折しも、今国会に治安上の秘密を保全する法案が提出される。中身も周知されず、議論も不十分なままだ。国民に見せず、聞かせず、知らせず―では未来につながる国の姿はかすむ。政府を厳しくチェックする目を養いたい。(平良哲)(大弦小弦2/13

  沖縄タイムス2/14社説 [秘密保全法案]知る権利に背くものだ 

宜野湾市長選挙


 選挙戦にトライアンギュレーションという手法がある。県知事選にもかかわった選挙プランナー三浦博史さんによると、「三角測量」などの意味を持ち、米国での選挙プランナーでネガティブキャンペーンの第一人者、ディック・モリスが使い始めた言葉だという

 考えが違う相手候補の目玉主張を取り込むことで、争点をぼかし、残った相違点で勝負するという戦術を指している

 宜野湾市長選で新人の佐喜真淳氏(47)が元市長の伊波洋一氏(60)を破り、初当選した。佐喜真氏は「県外移設」を訴え、基地問題での争点化を避け、雇用・経済政策を前面に掲げた。長く対立してきた革新陣営は目玉主張を取り込まれ、術中にはまった格好だ

 自民、公明が県内移設反対に 転じ、革新陣営は一昨年の参院選、知事選に続き3連敗。基地問題でかわされると、有効な手だてが打てていない。革新のエース伊波氏を落とした打撃は大きい

 超短期決戦とはいえ、伊波氏に頼るしかなかったことに革新陣営の苦しい事情がうかがえる。人材発掘や世代交代という課題があらためて突きつけられた

 敗戦の総括はなかなか難しい。責任のなすり付けあいに終始しかねない。革新共闘の存亡の危機に、冷徹な敗因分析が不可欠だ。それは自主投票で終わった民主党にも求められている。(与那原良彦)(大弦小弦2/14

  トライアンギュレーションとマニフェスト(選挙公約)違反は今やセットで重用されている。この夏には県議選が控えている。騙されるな!沖縄の有権者

岩国と名護


 沖縄とそれ以外の日本とで、これほどまで対応を変えるのはなぜだろう。なぜ岩国では「踏まれても蹴られても」説得を続けず、辺野古移設は米側に拒否を示さないのか

 玄葉光一郎外相のことだ。普天間飛行場の名護市辺野古移設では、県内強行の立場を取る。一方、米側から打診された在沖海兵隊の岩国基地への一部移転には地元に対し「お願いすることはない。安心してほしい」と説明し、米方針を拒否する意向だ


適切な体重減少

 理不尽な図式について、沖縄市出身の野村浩也広島修道大学教授は自著「無意識の植民地主義 日本人の米軍基地と沖縄人」で読み解く。「沖縄に米軍基地を集中させることは、沖縄人を犠牲にすることによって日本人が負担を逃れる方法であり、まぎれもなく日本人にとって利益になる」

 1人の政治家は「沖縄にいらないものは、日本のどこにもいらないものだろうと思うから、国外が優先されるべきだ」と説き、もう1人は「県外移設を求め、受け入れる先があれば市長として頭を下げにいく」と主張した

 宜野湾市長選で争った2氏が、琉球新報の座談会で普天間の移設先で述べた持論だ。当選したのは後者の佐喜真淳氏だ。国に堂々 と公約を訴えてほしい

「在日米軍基地の平等負担を」。これを野村氏は最低限の人権要求と指摘する。新市長は具体的にどう踏み込むか。胆力に注目したい。(金口木舌2/15


 (お茶の水書房

沖縄住民はハワイのコウモリ以下


 米国がウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦に使ったヘリは、最新機器搭載の改良型ブラックホークだった。パキスタン上空の山岳地帯を90分間、高度30メートル、時速200キロで「匍匐(ほふく)飛行」したという

 「危険な任務の成功」を、オバマ大統領ら関係者が喜々としてドキュメンタリーで語っていた。映像は、ハワイに配備されるオスプレイが山岳地域を地形に沿って飛び、低空飛行する計画があると報じた本紙記事と重なる

 計画が記されていたのは環境影響評価(アセスメント)の準備書。普天間飛行場へは、今年後半に配備される予定で、同様に訓練が強化される懸念が広がっているのに内容はいまだ不明だ

 住民の疑問に、ハワイでは「早い段階で質疑応答を公開� �、(課題を)つぶしていく」手法を取る。対する沖縄防衛局は評価書で「適切に行っていく」と回答になっていない見解を50回も繰り返した

 極みはハワイの準備書で、緩衝地帯に希少種のコウモリが生息していたら「運用されないだろう」とあることだ。普天間の現状に照らすと、沖縄の住民は日米両政府から「コウモリ以下」に見られているとしか読めない

 辺野古アセスに投じられた税金は6年で86億円。住民をないがしろにした政策を推し進める政府と、後押しする一部本土メディアの見識を疑う。(与那嶺一枝)(大弦小弦2/15

  住民をないがしろにした政策を推し進める日本政府。沖縄、福島の次はあなたの番です。あなたの所に行く前に行動を起こして下さい。

「沖縄は日本ですか」

 
「沖縄は日本ですか」。元知事の大田昌秀さんが現職時代、語気を荒らげて記者団にこう問いかけたことがある

 沖縄の米軍用地を地元の反対があっても安定確保できる駐留軍用地特別措置法の改定案が成立する見通しとなったことへの感想を求められた時のことだったと記憶している。15年前の話だが、気色ばんだ大田さんの顔が今も脳裏に残る

 米軍再編見直しをめぐり、在沖米海兵隊の一部約1500人を米軍岩国基地に移したいとの米側の打診を政府が拒否することを決め、地元の山口県などに伝えたとの記事(14日付1面)を読み、大田さんの言葉を思い出した

 地元の反対が理由らしいが、沖縄側からすれば釈然としない。日本の安全保障に米軍基地が不可欠と言うなら、応分の負担を求め� ��のが筋だと思うが、政府はその努力のそぶりさえ見せず、本土側の言い分を即座に受け入れてしまったからだ  


スティーブアーウィン号は、痛みで死んだ

 米国が本土移転は可能だと認めた海兵隊の居残りを、今度は沖縄側が拒んだら政府は何と答えるだろうか。お得意の「沖縄の地理的優位性」か、はたまた「抑止力維持」だろうか

 来週末、米軍再編見直しの状況を説明するため初来県する野田佳彦首相に会う仲井真弘多知事には、岩国移転の件を持ち出し、首相にこう聞いてほしい。「沖縄は日本ですか」と。(稲嶺幸弘)(大弦小弦2/16

  その岩国市で1月末にあった岩国市長選挙では、米軍空母艦載機の岩国基地移転を容認する現職の福田良彦氏(41)が、移転反対派の前市長の井原勝介氏(61)と共産推薦の新人、吉 岡光則氏(66)の2氏を大差で破り2選を果たしたのですよ。知ってました? .

恥ずかしい日本標準の「アセスメント」


「アセスメント」という言葉は看護や介護、教育などの現場でも使われる。その人がどういう状態か、前もって集めたデータで正しく「評価」することが、的確な治療や支援へと結びつく

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた環境影響評価(アセスメント)の手続きは、沖縄防衛局による未明の評価書搬入も異例なら、後出しでMV22オスプレイ機の配備を記載してきたのも異例

 さらに専門家から科学的・客観的な意見を聴くアセス審査会でも、「非常識で憤りを禁じ得ない」との会長私見が冒頭から飛び出すなど、異例づくしの展開が続いた

 米との合意に沿って辺野古移設を進めたい国にとって都合のいいようなデータを集め、内容の不備を指摘された評価書を� ��が受け入れられるわけもなく、知事意見は「辺野古移設は事実上不可能」とする内容となった

 社会面で連載中の「アセス差別の構図を問う」は、米国内でのアセス手法や基地の運用実態を紹介している。沖縄での傍若無人ぶりがうそのように、軍事超大国の大本では騒音に配慮し、野生生物を守るなど軍事よりも環境保護が優先するのだという

 何が何でも米国の意向に従おうという日本政府の姿勢が、アセス本来の趣旨を大きくゆがめてしまった。初めからやり直すのが筋というものだろう。(平良秀明)(大弦小弦2/18

   住民をないがしろにする政治がこの国を席巻している。都合のいいデータだけを集めて、やらせメールを駆使して、全国の学校に副読本まで配� ��て、原発の安全神話をつくりあげたのもこの手法だ。これって憲法に違反しているのじゃないの?法律に詳しい人、教えて。それを仕組んだ人たちが裁かれない限り、こういう政治が横行し、世界中の人から「ああいう国になったらおしまいね」と言われるに違いない。

国連も沖縄への基地の集中は異常だと言っている


 「沖縄県の出身者は日本民族」なのだという。沖縄の過重な基地負担の解消を求めた国連人種差別撤廃委員会の勧告に対する日本政府の見解だ。外務省ホームページに載っている政府見解を読み、喜納昌吉さんの歌「島小(しまぐゎあ)ソング」が頭に浮かんだ

 この歌で喜納さんは「我んねー島小」と宣言し、情けは捨てるな、言葉を忘れるなと畳み掛ける。歌が発表された1970年代後半、沖縄では米軍演習激化や乱開発など、さまざまな矛盾が噴出していた

 基地問題は人種問題にあらずと外務省は言いたいのだろう。しかし、単一民族説を振りかざすような論法に居心地の悪さも感じる。基地負担に差別をみる県民は納得するだろうか

 「沖縄県民は日本人か」という問いは� �帰後もやむことはない。そこには政府の沖縄施策や国民一般の沖縄観が複雑に絡んでいる。本土との同化と異化の間で、県民は「日本民族」という言葉に微妙な態度で応じてきた


 琉球処分後、県民は「臣民」だと諭され、復帰運動では「同胞」と呼ばれた。今日、基地問題や日米関係に絡めて「反日」「反米」という悪罵がネット上で県民にぶつけられる。私たちは自画像を描くのに困惑している

 喜納さんのように声高に叫べなくても「私は島小だ」とつぶやいていたい。その立ち位置から見える沖縄や日本の姿にこだわるからだ。 (金口木舌2/18

 

  もし沖縄が日本を見限って独立したいと言ったら、日本政府(日本人)は黙っていないだろう。資源のない沖縄を日本が手放したくない理由はただひとつ。沖縄が使い勝手がいいからだ。日米同盟で日本はその領土を米国に基地提供する義務を負っている。沖� �が日本でなくなれば、米軍は沖縄にいられなくなる。日米の安全保障のために米軍が国内に駐留しているわけだが、沖縄は基地があるために安全が保障されていないのだ。なぜ沖縄の私たちは多くの日本人と同じくらし(安全)を求めてはいけないのか。このことについて、政府からも日本人からも明確な答えはない。

 話をもどそう。沖縄の独立を阻止するため日本政府はどんな手を使ってくるだろう。まず考えられるのが経済制裁による兵糧攻め。きび畑を全部水田に戻し今から準備しなければ。中国との緩衝帯がなくなっては困る点で一致できる日米両国は軍事介入してくるかもしれない。決して武装蜂起しない沖縄は国連に堂々と救済を提訴する。前述した「国連人種差別撤廃委員会」は力になってくれるはずだ。� ��れだけではない。「世界ウチナンチュ大会」の参加メンバーがそれぞれの国の政府を動かしてくれるに違いない。「アラブの春」の国々とも連携できる。過去に自治権を獲得していったアジアやアフリカ、太平洋の国々も応援してくれるし、安保理は無理でも総会では勝てる。でも相手は日米だけでないかもしれない。台湾やチベット問題を抱える中国は、沖縄独立が中国国内に影響しては困ると、日米中でこれをつぶそうと手を結ぶかもしれない。そうなると東アジアの緊張は解け、極東の安全・安定に沖縄が寄与したことにならないか。
 
 独立を達成した沖縄は(現に沖縄ぐらいの面積、人口、財政規模の独立国はめずらしくない)、軍事基地を全廃することで、ユネスコの世界自然遺産登録を果たし、多様な生態系を持つ南西諸島全域を世界的なエコツーリズムゾーン(「東洋のコスタリカ」)にすることで観光・芸能立国を目指す。広大な基地跡地を食料自給・エネルギー自給のために使い、さらに国連機能の一部を誘致して非武装中立・「万国津梁」を国是とし、他国が侵略できない国づくりを進める。もちろん「住民をないがしろにしない政治」を実現することにより、周辺諸国で抑圧されている人たち(難民)も積極的に受け入れ少子高齢化に歯止めをかける。おそらく日本の国に嫌気がさした人、放射能汚染からのがれてくる人など、日本� ��の流入が最も多いことが予想される。資源のない沖縄だが、「多種多様な人間こそ資源」となるかつての琉球のような国がよみがえるに違いない。

  



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