2012年5月18日金曜日

多発性筋炎および皮膚筋炎: 自己免疫リウマチ性疾患: メルクマニュアル18版 日本語版


多発性筋炎および皮膚筋炎は,筋肉(多発性筋炎),皮膚と筋肉(皮膚筋炎)の炎症性変化および変性変化で特徴づけられるまれな全身性リウマチ性疾患である。最も特異的な皮膚徴候は,ヘリオトロープ疹である。特徴的な症状は,主として近位肢帯の筋肉の,対称性の筋力低下,何らかの圧痛,その後の萎縮を含む。合併症には,内臓障害や悪性腫瘍がありうる。診断は,臨床所見および筋肉の検査における異常(筋肉酵素を含みうる),MRI,筋電図検査,筋生検により行う。治療は,コルチコステロイド,ときに免疫抑制薬または静注免疫グロブリンを組み合わせて投与する。

患者の男女比は2対1である。これらの疾患はどの年代にも発生しうるが,最も多くは40〜60歳と,小児では5〜15歳である。

病因

原因は,遺伝的に感受性のある人の筋組織に対する自己免疫反応のようである。家族内集積が起こり,HLAサブタイプのDR3,DR52,DR6が素因となる。誘発する可能性のある事象は,ウイルス性筋炎や根底にある悪性腫瘍である。ピコルナウイルスのような構造物が筋細胞で見つかっており,ウイルスは動物に同様の障害を誘発しうる。悪性腫瘍と皮膚筋炎との関連は(多発性筋炎とはあまり関連がないが),筋肉および腫瘍の共通抗原に対する自己免疫反応の結果,腫瘍が筋炎を起こしうることを示唆する。

IgM(免疫グロブリンM),IgG(免疫グロブリンG),補体の第三成分の沈着は(特に小児期型皮膚筋炎において),骨格筋の血管壁に生じる。その他の自己免疫疾患は,多発性筋炎の患者にも発病しうる。

病態生理

病的変化は,様々な程度の炎症とともに,細胞の障害や萎縮である。手,足,顔面の筋肉は,その他の骨格筋より発症は少ない。咽頭と食道上部,ときには心臓,胃,腸の内臓筋の障害は,それらの臓器の機能を損なう。横紋筋融解によるミオグロビンの高い血中濃度は,腎臓を障害しうる。炎症は,関節と肺で,特に抗シンテターゼ抗体をもつ患者に生じることがある。

分類


鎌状赤血球貧血症、嚢胞性線維症

多発性筋炎には5つのサブタイプがある: (1) 原発性の特発性多発性筋炎はあらゆる年齢で生じることがあり,皮膚には障害を起こさない。(2) 原発性特発性皮膚筋炎は原発性特発性多発性筋炎と類似しているが,皮膚にも障害を起こす。(3) 悪性腫瘍と関連する多発性筋炎と皮膚筋炎はあらゆる年齢で生じうるが,高齢者や関連する結合組織病の患者に最も多くみられ;悪性腫瘍は,筋炎の発症前後より2年以内に進行しうる。(4) 小児期の多発性筋炎と皮膚筋炎は,全身性血管炎と関連している。(5) 多発性筋炎または皮膚筋炎は,関連する結合組織疾患,最も多くは進行性全身性硬化症,混合結合組織病,SLEとともに発症しうる。

封入体筋炎は,しばしば誤って多発性筋炎とともに分類される。封入体筋炎は,慢性の特発性多発性筋炎と類似した臨床症状を示す別の疾患であるが;高齢者に発病し,遠位筋(例,手と足の筋肉)を侵すことが多く,長期にわたり,治療に十分に反応せず,組織学的所見が異なる。

症状と徴候

多発性筋炎の発症は急性(特に小児)または潜行性(特に成人)でありうる。急性のウイルス感染は,通常は近位筋の筋力低下または発疹の初期症状に,ときに先行するかまたは刺激する。筋肉の圧痛や痛みは通常,筋力低下ほど劇的ではない。多発性関節痛,レイノー現象,嚥下障害,肺の症状,そして特に,発熱,疲労,体重減少からなる全身の愁訴も生じうる。レイノー現象は,その他の結合組織疾患も合併する患者にごく一般的にみられる。

筋力低下は,数週間から数カ月間にわたって進行しうる。しかしながら,症候的な筋力低下を示すには筋線維の50%の破壊を要する(すなわち,筋力低下は進行性の筋炎を示す)。患者は腕を肩より上に上げたり,階段を上ったり,座った姿勢から立ち上がったりするのが困難になりうる。患者は,骨盤帯や肩甲帯の筋肉群が筋力低下するために,車イスの使用または寝たきりを余儀なくされることがある。首の屈筋が重度に侵され,頭を枕から上げることができなくなりうる。咽頭および食道上部の筋肉の障害は,嚥下を障害し,逆流の原因となりうる。手,足,顔の筋肉は,障害を免れる。四肢拘縮が最終的に起こりうる。


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皮膚発疹は皮膚筋炎で起こり,黒っぽい紅斑性となる傾向がある。紫がかった外観の眼窩周囲浮腫(ヘリオトロープ疹)は,皮膚筋炎に特異的である。皮膚の発疹は,わずかに膨隆し,滑らかまたは鱗状であり;額,首や肩のV字型の部分,胸や背中,前腕や下腿,肘や膝,内踝,近位指節間関節や中手指節関節の橈背側(Gottron丘疹)に現れることもある。指爪の基部や側部は充血していることもある。皮膚が割れる剥離性皮膚炎が指の橈側面に現れることがある。一次的な皮膚の病変は完全に消えることが多いが,二次的な変化(褐色の色素沈着,萎縮,瘢痕,または白斑)が残ることもある。皮下のカルシウム沈着が,特に小児に生じることがある。

多発性関節痛または多発関節炎は,しばしば腫脹,滲出液,非変形性の関節炎のその他の症状発現を伴い,約30%の患者に発生する。しかしながら,関節の症状発現は軽度である傾向がある。それらは,Jo-1またはその他の抗シンテターゼ抗体を有する亜集団により多く発生する。

内臓障害(咽頭や食道上部の障害を除く)は,多発性筋炎ではその他のリウマチ性疾患(例,SLE,全身性硬化症)ほど多くは起こらない。ときに,特に抗シンテターゼ抗体をもつ患者では,間質性肺炎(呼吸困難および咳で発現)が最も顕著な症状である。心律動異常(不整脈,伝導障害,異常な収縮期時間間隔)が起こることがあるが,しばしば無症状である。胃腸症状は,関連する脈管炎を有する小児に多く,吐血,下血,腸穿孔の症状発現などを伴うことがある。

診断

筋肉の圧痛の有無にかかわらず近位の筋力低下がみられる患者では,多発性筋炎を疑うべきである。ヘリオトロープ疹やGottron丘疹のある患者や,多発性筋炎の症状と皮膚筋炎と矛盾しない何らかの皮膚所見のある患者には,皮膚筋炎を疑うべきである。多発性筋炎および皮膚筋炎は,全身性硬化症または,頻度は少ないがSLEまたは脈管炎の特定の臨床所見を共有する。診断の確立には,次の5つの判定基準のうちできるだけ多くの項目の一致が必要である:(1)近位筋の筋力低下;(2)特徴的な皮膚発疹;(3) 血清筋肉酵素値(CK,またはCKの上昇がなければアミノトランスフェラーゼまたはアルドラーゼ)の上昇;(4) 筋電図検査またはMRIにおける特徴的な異常;(5)筋生検の変化(確定的な検査)。


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筋生検は,封入体筋炎やウイルス感染後の横紋筋融解症のような,いくつかの類似する状態を除外する。生検所見は多様でありうるが,慢性炎症と筋変性と再生は典型的である。決定的な(通常は組織)診断は,有毒である可能性のある治療を正当化するために必要である 。筋肉の浮腫および炎症の部位を確認することにより,MRIは生検部位を選択する助けとなりうる。

臨床検査は疾患の疑いを増減することができ,その重症度を評価して,共通点を確認し,合併症を検出するのに役に立つ。抗核抗体は,(ほとんどの場合別の結合組織疾患を有する)少数の患者で陽性である。患者の約60%は,胸腺核抗原(PM-1)または胸腺全体とJo-1に対する抗体を有する。Jo-1に対する抗体は線維化性肺胞炎,肺線維症,関節炎,レイノー現象の重要なマーカーであるけれども,これらの自己抗体と病因との関係は不明なままである。

クレアチンキナーゼ(CK)の定期的な測定は,治療のモニタリングに有用である。しかしながら,ときにそれらの値は,広範囲の筋萎縮症の患者で,慢性で活動性の筋炎にもかかわらず正常である。筋生検,MRI,または高いCK値により,多発性筋炎の再発とコルチコステロイド誘発性ミオパシーとをしばしば鑑別できる。

患者はしばしば,思いもよらない悪性腫瘍を有することがあるので,皮膚筋炎の全ての成人患者または60歳以上の多発性筋炎の患者に,以下のスクリーニング:胸部,骨盤,直腸(潜血検査とともに)を含む身体診察;CBC;生化学検査;マンモグラム;癌胎児抗原;尿検査;胸部X線を推奨する専門家もいる。 悪性腫瘍の症状のない若い患者は,スクリーニングを受ける必要はない。

予後

治療した患者の半数までは5年以内に長い寛解(明らかな回復もあり)がみられ,小児ではより多くみられる。しかしながら,依然として再発はいつでも起こりうる。全体的な5年生存率はおよそ75%であり,小児でより高い。成人における死は,重度かつ進行性の筋力低下,嚥下困難,栄養失調,誤嚥性肺炎,または混合型肺感染の伴う呼吸不全の後に続いて起こる。多発性筋炎は,心臓や肺に障害がある患者では重症となり,治療に抵抗する傾向がある。小児の死は,通常,腸管の脈管炎の結果として生じうる。悪性腫瘍は,もし存在すれば,一般に全体的な予後を決定する。

治療


炎症が鎮静化するまで患者の身体活動は制限すべきである。コルチコステロイドは,最初に選択する薬物である。急性疾患にはプレドニゾンを1日1回40〜60mg以上経口投与する。CKの連続的な測定は早期の治療効果を最もよく示し,ほとんどの患者で6〜12週間のうちに正常値に向かうか正常値に到達し,その後筋力が回復する。一旦酵素レベルが正常値に戻ったら,プレドニゾンを最初は1週間毎に約2.5mg/日減らし,その後さらに徐々に減らし;筋肉の酵素レベルが上昇したら用量を増加する。回復しているように見える患者は,綿密に監視しながら治療を徐々に中止させることができるが,しかし,ほとんどの成人はプレドニゾン(最高10〜15mg/日)の長期間にわたる維持を必要とする。小児では,最初に1日1回,30〜60mg/m2の用量のプレ ドニゾンが必要である。小児では,1年以上の寛解の後,プレドニゾンの投与を中止できることもある。

大量のコルチコステロイドを慢性的に投与された患者は,コルチコステロイド筋障害が重なって,ときにますます筋力低下をきたしていることがある。

患者がコルチコステロイドに反応できないか,コルチコステロイド筋障害またはプレドニゾンの中止または減少を余儀なくさせる別の合併症を発症する場合,免疫抑制薬(メトトレキサート,シクロホスファミド,アザチオプリン,シクロスポリン)を試みるべきである。患者によっては,メトトレキサートのみの投与(一般にRAに使用するよりも高用量)を5年以上受けている。静注免疫グロブリンは薬物療法に抵抗性の患者に有効でありうるが,極端に高い価格が比較試験の実施を妨げている。

腫瘍,転移性疾患,封入体筋炎と関連している筋炎は,通常コルチコステロイドに対して抵抗性を示す。悪性腫瘍に関連する筋炎は,腫瘍を除去すると寛解することがある。

最終改訂月 2005年11月



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